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復讐スパイラル

東野圭吾の「さまよう刃」を読んだ。ストーリーは、娘をレイプされたうえに殺害された父親が、謎の密告電話で犯人を知り、犯人である二人の少年のうちの一人の家で、そのレイプシーンを撮影したビデオを見てしまい、そのとき帰ってきた少年を殺してしまう。そしてもう一人の少年を殺すため、失踪する。警察もこの父親に見つかる前にその少年を捕まえようと必死の捜索をする。徐々に少年に近づいていく警察。そして父親も謎の密告電話に何度か導かれ、少年を追い詰めていく。って感じだ。
これだけ読むと、非情に暗い感じで、どろどろしていそうだけど、そんなことはない。たしかに生々しい描写なんかもあるけど、主人公の父親が復讐の鬼、というわけではなく、理性的で、本当にこれでいいのかと葛藤しながらも追跡している。 警察も少年を守るためではなく、この父親を守るために必死に捜索している。というのも、一度目の殺人は、衝動的な殺害なので、情状酌量の余地があり、罪が軽くなる可能性が高いが、二人目を殺してしまうと、これは計画的な犯行になるので、罪は重くなる。だから、先に少年を確保して、父親には自首してもらう。というのが、理想的なシナリオだったのだ。
俺は完全に父親を応援しながら読んだので、最後のシーンはなんともやりきれない気持ちになったけど、謎の密告者の正体はこいつだと思っていたら、実は…的な裏切りもあり、少年法のあり方についても言及するなど、社会的な一面もあり、まあ、いい本だったかなって感じだ。

これを読んで、一つ思い出した事件がある。ふつうなら、少年犯罪の事件を思い出すところだろうけど、ちがって、何年前か忘れたけど、福岡で起きた、公務員の追突事故を思い出した。この事故では、二人の子供が犠牲になっている。福岡の公務員が何件もBarやスナックをはしごして、べろべろに酔った挙句、猛スピードで車を運転し、4人家族がのった車に追突した。ちょうど橋の上で、その家族が乗った車は橋から転落して、海に落ちた。父親と母親は必死に二人の子供を助けようとしたけど、結局子供は二人とも死んでしまった。そのあいだ、その公務員は何をしていたかというと、助けを呼ぶこともせず、その場から逃げて、少しでもアルコールを消そうと、水をがぶ飲みしていたらしい。
その当時俺は配送の仕事をしていて、ほぼ1日中トラックに乗っていたので、毎日放送の「こんちは近ちゃん」でこの事件を知った。近ちゃんは怒り狂って、スピーカーが壊れるんじゃないかというくらい吠えまくっていたけど、それを聞きながら、俺も怒りに震えていた。というのも、ついついその事件の被害者が、もし当時付き合っていた彼女だったら…と想像してしまったからだ。まあ彼女じゃなくてもいいけど、自分の大切な人がそんなふうに死んでしまったら…これがどうしようもない理由、例えば、地震で橋が壊れたとか、突然タイヤがバーストしてハンドルが効かなくなったとかなら、あるていど時間がたてば、あきらめもつくかもしれない。でも、飲酒運転の車に追突されて、橋から落ちて、命を失い、加害者の方は助けも呼ばず、自分の保身に必死になっていただなんて、まったく救いのない話だ。俺は子供はいないし、もったこともないけど、とてつもない悲しみと怒りだろう。そのニュースを聞いてしばらく、やりきれない怒りと悲しみが消えなかった。俺ならどんなことをしてでもそいつを殺す。って思った。復讐は新たな復讐を生むだけだというけど、じゃあ大切な人を奪われた怒りと悲しみはいったいどこにもっていけばいいのか。冷静に考えれば復讐の連鎖は続けば続くほど、怒りも悲しみも膨張するだけだから、どこかで誰かがあきらめるしかない訳で、それは早いに越したことはないのだけれど、当事者からすれば、そう簡単に割り切れるもんじゃないだろう。あの子供を二人失った夫婦はいまどんな思いで生活しているのだろう。きっと悲しみはまだ癒えてないだろう。まだ、心のどこかで憎悪がくすぶっているかもしれない。それを思うと、さっきセブンイレブンで買った味噌ラーメンについていた一味唐辛子のマジックカットがまた切れなかったことで怒り狂っていたことをとても恥ずかしく思う。

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コメント

その作品、私も前から気になってました。
機会があれば読んでみたいです。

映画化された作品ですよね?

そして、あの追突事故も、覚えています。
ご家族の気持ちを想うと、ほんとやりきれないです(>_<)

投稿: パスタは飲み物 | 2011年1月30日 (日) 11時43分

あの事故、ほんっとぉに何とも言えない気持ちにさせられましたよね


あのご夫婦、その後女の子(確か…)を授かったんですよね


強いなぁ〜って思いました

投稿: 753 | 2011年1月30日 (日) 11時47分

そうかぁ~。ペスカと2人で白夜行観たい

投稿: soyoka | 2011年1月31日 (月) 23時32分

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